夕張のサンタ

https://mainichi.jp/articles/20171217/ddm/001/010/120000c



月給25万9000円の市長(その1) 

夕張の「サンタ」の10年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「12月25日が来ると、私が初めて夕張の地を踏んでから10年になるんです。みなさんに出会えたことに感謝しています」

 

 11月23日、雪がちらつく北海道夕張市の小さな集会所で開かれた地区懇談会。市長の鈴木直道さん(36)がしみじみと語ると「市長はサンタさんからのプレゼントだね」。約30人の市民から笑いが起こった。

 

 北海道の新千歳空港から約40キロに位置する夕張は、かつて炭鉱のまちとして栄えた。ピークだった1960年に11万7000人を数えた人口は石炭産業の衰退で激減。観光振興策の失敗などで632億円の債務を抱えた。民間企業でいえば倒産状態となり、2007年3月から「財政再建団体」(現制度では財政再生団体)として国の管理下に置かれている。

 「全国最低レベルの行政サービス、最高の市民負担」とやゆされる中、再建を支援した東京都が08年1月に派遣した職員の一人が鈴木さんだ。2年余りの応援派遣を終えて東京に戻ったが、11年4月の夕張市長選に出馬を請われて初当選。当時30歳1カ月の全国最年少市長となり、15年も無投票で再選された。だが、月給は7割カットの25万9000円。就任から1年を過ぎたころ、鈴木さんは私の取材に言ったことがある。「自己犠牲でやっているつもりはありません。私も生まれてきた意味を探しています。この夕張に何か貢献できれば、自分が存在した意味もあるのかなと」

 埼玉県出身で、北海道と縁もゆかりもなかった若き市長は、この10年で「意味」を見つけることができたのだろうか。それが知りたくて冬の夕張に向かった。 <取材・文 円谷美晶>